2010-01-01から1年間の記事一覧

ジェフリー・ディーヴァー『ロードサイド・クロス』

ジェフリー・ディーヴァー『ロードサイド・クロス』 キャサリン・ダンスシリーズ第2弾。ライムシリーズが科学捜査中心ならこちらは心理学を駆使した作品。 人間の心理的な部分が前面に出てる分、ミステリとしてだけでなく 文芸小説としての読み応えもたっぷ…

P・G・ウッドハウス『それゆけ、ジーヴス』

P・G・ウッドハウス『それゆけ、ジーヴス』 やっぱりこのシリーズは短編向き! と確認できた1冊です。 バーティーのおバカぶりは十分知ってるので 事態がさらに混乱するより、さくさく解決する方が断然面白いんです。しかも今回はコックのアナトールやバ…

倉知淳『なぎなた』

倉知淳『なぎなた』 短編集。『こめぐら』の姉妹本。 ユーモア満載の『こめぐら』と比べてこちらは本格路線まっしぐら。 1人だけ『こめぐら』と共通の人物が登場してます。 しかしこの短編集はどの作品も質が高いヨ。 しょっぱなの「運命の銀輪」が倉知さん…

東野圭吾『白銀ジャック』

東野圭吾『白銀ジャック』 身代金目的か復讐か? 読解力のない私は完全に作者の術中に嵌り この両天秤に翻弄されながらの読書でした。 東野さんらしい意外な犯人、意外な結末。 あまりに綺麗な結末すぎて、好みとは少々ずれるけれど 毎度のことながら映像化…

倉知淳『こめぐら』

倉知淳『こめぐら』 久々の短編集。姉妹本『なぎなた』 全体的にとぼけた雰囲気でユーモラスな短編集です。 (「遍在」だけは異色な作品かも) 結末読んで思わず脱力しちゃいそうな作品もありますが 私はこんなバカミス好きなんで、全然OK! というか、か…

宮部みゆき『小暮写眞館』

花菱英一の両親がマイホームに選んだのが 下町の古びた小暮写眞館。看板そのままで生活することになったが・・・。 いい小説に出会えたな〜と実感できる作品。 小説の長さも人物を描き分けるためには必要で 個性豊かな高校生やその親・兄弟達がイキイキと迫…

本多孝好『at Home』

本多孝好『at Home』 どこか歪んだ家族を描いた4つの短編集。 ちょっと常識では考えられない、 そしてホームドラマでは登場しないような家族が登場します。 歪んだと言っても、暗いジメジメした感じは全くなし。 逆に登場人物の能天気にぶっ飛んだ、予測の…

乾くるみ『セカンド ラブ』

乾くるみ『セカンド ラブ』 春香とそっくりな女・美奈子に翻弄される正明。 彼が本当に好きなのはどちらか? ラスト2行!この2行のために1冊読んだ感じ。 それまで思い描いて読んでいたことが 根底から覆ってしまったという驚きは久々で 最近この手の作品…

米澤穂信『遠まわりする雛』

米澤穂信『遠まわりする雛』 古典部シリーズ第4弾。短編集。 古典部シリーズは、日常の謎もさることながら 4人の青春小説として1粒で2度おいしい小説だと思ってます。 巧みさを前面に押し出さずにさらっと読ませる手法は流石。 特に「心当たりのある者は…

P・G・ウッドハウス『よしきた、ジーヴス』

P・G・ウッドハウス『よしきた、ジーヴス』 国書刊行会版ウッドハウスコレクション第2弾。長編。 『比類なきジーヴス』は短編集だったので、問題発生しても 有能な執事ジーヴスの手腕で次々と事態が沈静化するのですが 今回は長編。予想通り、沈静化する…

A・クリスティ『ねじれた家』

A・クリスティ『ねじれた家』ノンシリーズ。 ねじれた家に住む心のねじれた老人が、多額の遺産を残して毒殺された。 ねじれた家に住む家族はどの人もどこかしらねじれた部分があって、 孫娘ソフィアの恋人であるチャールズは、ロンドン警察副総監である父親…

有栖川有栖『乱鴉の島』

有栖川有栖『乱鴉の島』 火村&作家アリスシリーズ。 激務で疲れた火村を気遣う下宿先の主人の勧めで アリスと休養に出かけるが、手違いから目的地とは 違う島に来てしまった。そこは、数多の烏が乱舞する絶海の孤島だった! 大好きな孤島物。それだけで読む…

道尾秀介『花と流れ星』

道尾秀介『花と流れ星』 短編集。『背の眼』の真備シリーズ。 道尾作品というと、巧いんだけどどうも読後感好くなくて ズンと気持ちが沈みそうになる印象が強い。 だからなかなか手がでないんだけど、 この作品は大好きな真尾シリーズで しかも珍しく読後感…

A・クリスティ『ホロー荘の殺人』

A・クリスティ『ホロー荘の殺人』 ポアロもの。 大好きなポアロものだけど、 今回の灰色の脳細胞は完全に休眠状態。 ポアロ自身が、演じられている劇を観ている 観客の一人という印象です。 彼の快刀乱麻的な推理を期待しないで ノンシリーズとして読むと楽…

ポール・アルテ『狂人の部屋』

ポール・アルテ『狂人の部屋』 ツイスト博士シリーズ第4弾。 1930年代、イギリスの片田舎にあるハットン荘が舞台。 過去にその屋敷で叔父が呪いの言葉を吐きながら奇怪な死に方をした。 開かずの間となったその部屋を開けてから再び・・・。 怪奇的な雰囲気…

大矢博子『脳天気にもホドがある。』

大矢博子『脳天気にもホドがある。』[rakuten:book:13972433:image] なまもの!読者も、そうでない人も必読のエッセイ。 右半身麻痺と失語症のリハビリと闘う旦那様と 真正面に病気に向き合う大矢さんの 明るさと頑張りとユーモアのセンスに ほろっとさせら…

貫井徳郎『後悔と真実の色』

貫井徳郎『後悔と真実の色』 警察内部組織の人間関係のドロドロさも 某作家さんほどの嫌らしさもなくスッキリ読めました。 これくらいなら読後感も悪くならなくていいですね。 洗練されたクレバーな会話する刑事って 実際にいるのかも知れないけれど 私の中…

新井潤美『不機嫌なメアリー・ポピンズ』

新井潤美『不機嫌なメアリー・ポピンズ』 サブタイトルはイギリス小説と映画から読む「階級」。 英国小説大好きで、結構読んでいながら 漠然とした階級知識しか持ち合わせていなかった私は この本を読んで衝撃!目から鱗が・・・という気持ちでした。 イギリ…

P・G・ウッドハウス『比類なきジーヴス』

P・G・ウッドハウス『比類なきジーヴス』お人よしで怠け者、そしてお金持ちな独身貴族・バーティー。 彼に仕える、頭脳明晰な執事・ジーヴスが バーティーが巻き込まれてしまう騒動を 見事な手腕で解決してしまう、ドタバタコメディ。 抱腹絶倒と言っても…

A・クリスティ『死が最後にやってくる』

A・クリスティ『死が最後にやってくる』 ノンシリーズ。 紀元前2000年のエジプトが舞台。歴史ミステリ。 古代エジプトの死生観など興味深く読める作品ではあったし クリスティ作品ならではのロマンスや、人が次々と死んでいく恐怖 意外な犯人など読みどころ…

恩田陸『訪問者』

恩田陸『訪問者』 久々に緊張感溢れる恩田作品を堪能できました。 山中にひっそりたたずむ洋館が舞台で ほとんど設定場所が移動しないため、演劇を見ている様。戯曲のようでした。 「来客を告げるベルが鳴った」で始まる各章。 これは巧いなぁ。たった一つの…

A・クリスティ『謎のクィン氏』

A・クリスティ『謎のクィン氏』 短編集。 主人公は人間観察が大好きな初老のサターウェイト氏と 素性が全くわからない謎のクィン氏。 表立って事件解決していくのがサターウェイト氏で 彼に事件解決の指摘をして姿を消すのがクィン氏。 これが恋愛絡みの事…

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』 中・短編集。 久しぶりに過去作品を読むと伊坂節が堪能できて嬉しい。 彼の作品を買い続けているのは、予測できない会話と展開。 特に男女間の会話に漂っている温度と、女性のとぼけたキツさが 私的にはツボで、今回もそ…

鏑木蓮『東京ダモイ』

鏑木蓮『東京ダモイ』 江戸川乱歩賞受賞作品。 初めての作家さんです。先日の本格ミステリクラブ10周年 記念イベントでサインして頂いた作品。 期待以上の面白さでした。 ダモイという言葉の意味も解らず読み始めましたが それくらい戦後ロシアの捕虜とな…

コリン・デクスター『消えた装身具』

コリン・デクスター『消えた装身具』 今回の作品は少々今までと毛色が違って 人気が出たTVシリーズで、原作が足りなくなったための 書き起こしたオリジナル脚本がベースになった小説だそうです。だからか、少々物足りないんですよ。 モース警部の二転三転…

大山誠一郎『仮面幻双曲』

大山誠一郎『仮面幻双曲』 戦後という時代設定の探偵小説を読むのは久々。 探偵役の川宮圭介と奈緒子という兄妹がいい味出してて 主人公は好感持てました。 双子、血液型、整形手術で顔がわからない、警護しているのに 殺害されてしまう・・など魅力的な設定…

A・クリスティ『春にして君を離れ』

A・クリスティ『春にして君を離れ』 ノンシリーズ。 クリスティが別名義で発表した小説で ミステリではないので、殺人・犯人・謎解きがありません。 サスペンスでもなく、ただ一人の女性の紀行文の体裁を 整えているのだけなのに、心理描写だけで こんなに…

米澤穂信『ボトルネック』

米澤穂信『ボトルネック』 多感な少年の悲惨な家庭環境が哀しい。 東尋坊でパラレルワールドに迷い込んでしまう 主人公リヨウだけど、そこでの間違い探しの結果 彼が気付いた内容がさらに哀しい事実。 一度気付くと、どうにもやり切れない思いしか浮かんでこ…

京極夏彦『前巷説百物語』

京極夏彦『前巷説百物語』 今回は『巷説』の10年前、まだ百介とは出会っていない 若くて青臭い又市が描かれてます。 とにかく又市がよく喋る。 作中でも青臭いってよく言われてるけど シリーズ4冊目だからこそ、青臭い又市がとっても新鮮で キラキラ輝い…

京極夏彦『西巷説百物語』

京極夏彦『西巷説百物語』 今回の主役は又市ではなくて、又市の昔の相棒・靄船の林蔵。 刊行された4冊をすべて再読した上で読んだので 人物もよ〜くわかっていたつもりだったけど 林蔵って男前だったのね、いや、これは読み落としてましたヨ(笑) 「桂男」…