A・クリスティ『バートラム・ホテルにて』

A・クリスティ『バートラム・ホテルにて』

バートラム・ホテルにて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ミス・マープルシリーズ。
タイトルと古式ゆかしいホテル内の描写
特にお茶やお菓子や英国ならではのゆったりした
上流階級の過ごすホテル内の様子は
英国好きならたまらなく魅力的。
この部分だけでもこの作品を読んで良かったと思ってしまいます。


マープルの感じる違和感の実態が徐々に明らかになり
最後には驚きの展開に!
マープルの活躍が少なかったのは少々不満だし
終わり方にも首をかしげる部分はあるのだけど
なぜかこの作品、好きなんです。
舞台設定とホテル内描写の勝利かな。

ジャネット・イヴァノヴィッチ『私が愛したリボルバー』

ジャネット・イヴァノヴィッチ『私が愛したリボルバー

私が愛したリボルバー (扶桑社ミステリー)


ステファニー・プラムシリーズ第1弾。
日本には馴染みのないバウンティ・ハンターという職業を
やらざるを得なくなるステファニー。
綺麗に言えば彼女の成長物語なんだろうけど
そのドタバタぶりが面白くてたまらない。
また、バウンティ・ハンターとしてのど素人っぷりのハラハラさと
それをモレリに対してして認めまいとする
意地の張り方がとにかくカワイイ。
私はモレリより相方のレンジャーの方が好きだな。


彼女を取り巻く登場人物が主役を食うぐらいに
個性的で、セリフも楽しい。
いやー、こんなに楽しい小説に出会えて幸せ
って素直に口に出せるくらに気に入りました。

P・G・ウッドハウス『ジーヴスと恋の季節』

P・G・ウッドハウスジーヴスと恋の季節


ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション) [ ペラム・グレンヴィル・ウッドハウス ]



ジーヴスシリーズ第8弾。
いや〜安心して読めるジーヴスシリーズは
定期的に読みたくなる作品ばかり。
ここんとこ長編ばかりなんで
トラブル具合も絡まった糸のややこしいこと!



その内容は、やはり今回も友人の恋のトラブルに巻き込まれます。
学友のために自分の身を削るバーティが健気なんだわ、また。
予定調和内でのドタバタは安心して笑えますし
バーティのお人好し加減は気の毒なんだけど
腹黒ジーヴスの掌でいいようにあしらわれてる描写は
やっぱり面白い!


そしてシリーズ8冊目の終盤でようやくバーティが
アガサ伯母さんに向かっていこうとする辺り、成長したなー
と嬉しくなっちゃいます。
しかしいつも思うんだけど、皆のバーティの評価悪過ぎる・・
あんなに文学作品の引用ができる彼に!

島田荘司『アルカトラズ幻想』

島田荘司『アルカトラズ幻想』


アルカトラズ幻想


島田さんが書きたい本当のテーマみたいなのがあって
ミステリは単なる導入部、というタイプの作品が続いてます。


今回の導入部の猟奇殺人は惹きつけられる。
どんな意図があってこういう事件が起きるのか?
ワクワクしながら読み進めると
次は唐突に、何の繋がりもなさそうな章が続くので
本来なら肩透かしを食っちゃうだろうな。
ところがそこはそれ、島田さんの筆力と力技で
不自然に感じるどころか、最後には満足してしまう。さすがです。


特に私が好きだったのが第2章。
この重力論文は島田さん独自の考えみたいで
真偽のほどはわかりませんが
とても分かりやすく書かれているので
物理の教科書も島田さんが噛み砕いてくれたら
もっと簡単に理解できたかも知れない。
それくらいにわかりやすいです。

エンディングはただもうビックリ。
さぁ、どうだ!と言われたような幕切れでした。
いや〜ちょっとコメントし難い幕切れでしたが
私は2章に満足しちゃったので、全体的にも満足かな。

アーロン・エルキンズ『古い骨』

アーロン・エルキンズ『古い骨』


古い骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)



ケルトン探偵シリーズ第4弾。
モンサンミッシェルが舞台、ということで
読むのを凄く楽しみにしてました。
いつかは行ってみたかったので。
しかし美しい場所なのにあんな危険性も隣合わせてたとは!
行けるかどうかわからないけど、
この小説でその危険性を知って良かったです。
そして楽しそうな食事シーンもいいな。
あのレストランのオムレツは要チェックなのです。


ミステリ的には適度な驚き、そして相変わらずの骨の薀蓄。
クリスティ作品のように、登場人物内でのカップル誕生も好ましく
本格ミステリを満喫できて読後感良かったです。
ギデオンもジュリーと離れたくらいが丁度いい感じ。
この作品から日本で出版されたのも納得です。

アーロン・エルキンズ『暗い森』

アーロン・エルキンズ『暗い森』


暗い森 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


ケルトン探偵シリーズ第2弾。
凄く地味な印象を受ける作品で
読後感も驚きもさほどなく、淡々と終わってしまった感じ。
ギデオンとジュリーの馴れ初めはよくわかるので
まずこれから読むといいかも。
ただし私はこの描写が甘ったるくくどく感じられて
ちょっと辟易としてしまったけど、これは国民性なのか年齢なのか。


骨に関する蘊蓄はさすがです。
こんな小さな骨の1片からこんな事実が?
と読む内容に驚きばかり。
まぁ、それがこのシリーズの柱なんだけど
事件の謎を骨から推理していく主人公を立てるあまり
FBI捜査官がちょっと不甲斐なく感じられるのは
しょうがないのかな。今後はもっと活躍するんだろうか。

ドロシー・L・セイヤーズ『学寮祭の夜』

ドロシー・L・セイヤーズ『学寮祭の夜』



学寮祭の夜 (創元推理文庫)


ピーター卿シリーズ。長編。
700ページを超える長さに躊躇しちゃうけど
読了後はその長さも納得できる内容。
それほどハリエットとピーター卿の関係は複雑なのです。
そしてハリエット視点の内容は、揺れ動く彼女の心情が
紙面からビシビシ伝わってくるので、成り行きが気になって
もう夢中で読めました。


だけどだけど・・・この作品、引用が多いヨ!
これがツボだ〜と言える教養があればいいのですが
私は最初からわからなくても気にせずぐいぐい読んじゃってます。
しょうがないでしょ。セイヤーズの作品、引用多すぎるんだもん。
当時の女性の仕事への考え方や学問に身を捧げることの難しさ
など読みどころは多いです。



途中、特定できない犯人が徐々にエスカレートしていく様は
本当に怖い。犯人の狂気が、とにかく怖かったです。
まぁ二人が無事に一緒になれるんだから
これは記念すべき1冊ですね!