小野不由美『ゴーストハント7 扉を開けて』

小野不由美ゴーストハント7 扉を開けて』


ゴーストハント 7 扉を開けて (幽BOOKS)


おお〜そうだったのかっ!すべてが氷解する最終巻。
頷きながら納得して夢中で読んじゃいました。
1巻からの細かい伏線も丁寧に回収されて
ただただ面白かったの一言。
最終巻に向けての人間関係もいい感じだし
麻衣が徐々に能力を発揮していく件なんて
巧いこと説明してるよね〜。
さすが小野不由美さん!
これ全部を知った上でもう一度最初から読むと
あれもこれも・・とニヤニヤできるんだろうね。


7巻はまたもや学校が舞台。
哀れさを感じずにはいられない背景に
解決法も、こうきたか!って感じ。
そのための説明もきっちりで、十分に納得できました。


ところで残念ながら終わっちゃいましたが
あまりに個性的な面々がまた集うことなんてあるのかしらん。
ナルを中心にもっとこのシリーズを読みたいって
熱烈に思いました。

A・クリスティ『ハロウィーン・パーティ』

A・クリスティ『ハロウィーン・パーティ』



ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ポアロ物。長編。
ご存知ミステリ作家のオリヴァ夫人が
ポアロに事件を持ってくる。
嘘ばかりついてる少女が「殺人を見た」発言の直後に
パーティー中に殺害されてしまう。
普通だったら、今回だけは彼女は真実を述べていた
となりそうだし、私もそう確信していたのに
彼女の人となりをポアロが色々な人物に
尋ねることによって浮かび上がってきたのは
どう考えても彼女は嘘つき少女。
今回だけは真実を言ってたのか、否か?
私が感心したのはこの部分。
クリスティのひねりが見事なんですよね!


当時、少女達が精神異常者に狙われる事件が
社会問題になってたのでしょうか。
クリスティ作品初期の頃にはなかったフレーズが登場することで
この作品が後期の作品だ、と改めて感じたりしました。
ポアロといえばヘインスティングみたいに言われてるけど
結構オリヴァ夫人も登場してますよね。
犯人は外すけど、直感めいたことには優れている
中年おばちゃんの彼女を私は好きです。

ドロシー・L・セイヤーズ『殺人は広告する』

ドロシー・L・セイヤーズ『殺人は広告する』


殺人は広告する (創元推理文庫)


いやいや、これはなかなかに面白いっ!
冒頭からいつもと違う演出。
雑然とした広告会社内部が活き活きと描かれていて、
当時の広告業界の内幕をのぞけるなんて嬉しい限り。
しかもここで登場するコピーの巧いこと。
これだけでもピーター卿のファンは一読の価値ありって感じです。



私が気になるのはミートーヤード嬢。
もうこの先、彼女が本シリーズに登場することはないんでしょうね。
聡明な彼女にまた会いたくてしょうがありません。


事件に関しての決着の仕方はピーター卿らしいですね。
途中、彼がかなり悪ノリしてる気もするんだけど
私的には女子社員の噂がなかなかに面白く、例えバンターの登場がなくても
何度でも読みたい気を起こさせる、そんな楽しい作品でした。
難を言えば、バンターの登場がないことくらいでしょうか。

モーリス・ルブラン『ルパン、最後の恋』

モーリス・ルブランルパン、最後の恋


ルパン、最後の恋 〔ハヤカワ・ミステリ1863〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


70年ぶりに発見された未出版の原稿。
ようやく世に出て、またルパンに会える〜と
ワクワクしながら読みましたが・・・。
再びルパンに会えて嬉しい半面
ちょっと推敲不足かな、と内容に不満も残ったり。
そこら辺の経緯は訳者あとがきで詳しく説明されてます。
もう少しルブランが長生きできたら
この作品ももっと違った物になったかも知れませんネ。


でもルパンはルパン。それも新しいルパンに出会えます。
ルブランがルパンを通してどういう世に中にしたかったか
その理想が十分すぎるほど伝わる今回の作品。
それを知ってから過去作品を読むと
過去の行動が目的を達成させるための手段として
また違った読み方もできるかも知れません。

A・クリスティ『暗い抱擁』

A・クリスティ『暗い抱擁』


暗い抱擁 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


メアリ・ウェストマコット名義作品。ノンミステリ。
「背表紙のあらすじを絶対に先に読んではいけない」
という忠告をネットで読んでたのが助かりました。
これ、ほとんどネタバレですね。先にあらすじ読んでたら
面白みが半減しちゃいます。背表紙は後で読むべし。


基本的にはウェストマコット名義作品は苦手。
登場する女性に共感できないのが第一の要因だと思われますが
今回のイザベラはそういう点では不思議な存在。
イザベラの内面が一切ないため、彼女の思考や気持ちは
語り手のヒュー・ノリーズを通してしか理解できません。
何を思ってあのような行動をとって
何を思ってああいう生活を送っていたのか。
彼女視点で同じ内容を描いた作品が読みたいっ!
とつい思っちゃいました。


そして下層階級に生まれたゲイブリエル!
生れに雁字搦めになった彼の哀れさと
イザベラの不思議さが妙に印象に残った作品でした。

ヘニング・マンケル『殺人者の顔』

ヘニング・マンケル『殺人者の顔』



殺人者の顔 (創元推理文庫)


クルト・ヴァランダーシリーズ第一弾。
まさに北欧ミステリ!
天候も悪いし、寒々とした重苦しい雰囲気が
何ともいえない気持ちにさせられます。
ただ主人公ヴァランダー刑事の人間味ありすぎる
駄目行動っぷりには、憐れさを通り越して笑ってしまいます。
もう、本当にダメじゃん。
と温かい気持ちで読めるので、最初考えてたほど
沈痛な印象は受けませんでした。


さらにこの刑事、生傷が絶えないのも珍しい。
お役所仕事の大変さも丁寧に描かれていて
刑事物としても面白さが満喫できる作品。
日本の警察小説読み慣れていると
本作品のチームワークの良さは大変心地良く読めます。


スウェーデンの移民実態については全く無知だったため
いい勉強になりました。
これは読み進めたいシリーズだな。

S・J・ローザン『新生の街』

S・J・ローザン『新生の街』


新生の街 (創元推理文庫)


リディア・チン&ビル・スミスシリーズ第3弾。
語り手がリディアとビルで交互に変わっていくシリーズ。
今回はリディア視点。


今回も無茶をするリディアとそれを心配する家族の気持ち
そして相棒のビルがリディアをフォローする様子が
読んでて心地よい。身長の低いリディアが懸命に事件を
解決しようとし、その割りに武術も絶対的に強いわけではないので
読者もハラハラしながら読み進めないといけない。


リディアの母親の気持ち、わかるなぁ!
その露骨な態度の表れが微笑ましい。
これからの探偵コンビの仲がどう発展していくのか、
それにつれて母親の態度がどう軟化していくのか
事件解決と同じくらいに気になって
さくさく読めてしまう。


作品に登場する料理も美味しそうで
リディアはもっと中国茶を飲みそうなのに
紅茶を美味しく飲んでる。影響受けそう。