ジル・チャーチル『毛糸よさらば』

ジル・チャーチル『毛糸よさらば』


毛糸よさらば (創元推理文庫)

ジェーンシリーズ第2弾。長編。
前作に引き続き、とても読みやすい作品。
事件が発生して真相が気になりながらも
日常をこなすジェーンの様子に共感することしきりで
さくさくと読めちゃうシリーズです。


特にクリステマス直前という設定がいいなぁ。
海外の家庭にとってクリスマスへの力の入れ様を考えたら
この時期の主婦は本当に忙しいそう。
そういう日本とは違った生活様式を読めるのも
翻訳小説が楽しい一因なんですよね。


主人公ジェーンも応援したくなる人物なんだけど
私は隣に住んでる親友シェリイが好き。
どれだけこの地区は物騒なんだよ〜というくらいに
殺人事件が起こっている。
舞台はずっとこの地区なのかな?
先が楽しみ♪

ドロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』

ドロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』



死体をどうぞ (創元推理文庫)


ピーター卿シリーズ第7弾。長編。
ハリエットが死体を発見してしまったが
すぐに警察に通報できない状況。
その中での彼女の冷静な対応が素晴らしい!
殺人か自殺か、くるくると変わる展開
仮説構築、破壊、仮説構築、破壊・・・という
デクスター張りの構成は読み応えあるんだけど
暗号解読の件は正直しんどかった。
あれは申し訳ないけど、もう少しシンプルにできなかったんだろうか。



そしてあの真相。ええ〜という力技にビックリ。
これ、本格作品としては評価分かれそう。
ただしピーター卿とハリエットとの掛け合いは本当に楽しくて
そして何より従僕バンターの素晴らしい探偵術には拍手〜!
読後感は良かったです。
二人の今後が楽しみだなぁ。

ジル・チャーチル『ゴミと罰』

ジル・チャーチル『ゴミと罰』


ゴミと罰 (創元推理文庫 (275‐1))


ジェーンシリーズ第1作。長編。
タイトルからして面白そうな予感。
そしてタイトルだけでなく、中身がまた面白い!
3人の子供がいる主婦が殺人事件に巻き込まれた。
主人公ジェーンは止むを得ず事件の解決に乗り出そうとするけど
怖い物知らずで出たとこ勝負的な行動にヒヤヒヤ。


だけど何より驚くべきことは、殺人が起ころうが
日常の家事や子育てをガムシャラにこなす主人公の姿。
確かにそうだわ。母親なんだもの、例え殺人事件が起こっても、
子供の送迎当番はこなさなくちゃいけないし
食べてくれない朝食もきっちり作らないといけない。
そこら辺の描写に共感することしきり。
ミステリ的にもしっかりしてるのがますますいい感じ。
これ1冊でこのシリーズにファンになっちゃいました。


ところでこの作品が書かれたのが1989年。
アメリカってこんな時代から普通に食洗器があったのね。
ちょっとカルチャーショック!

モーリス・ルブラン『強盗紳士ルパン』

モーリス・ルブラン『強盗紳士ルパン』


強盗紳士ルパン (ハヤカワ・ミステリ 404)



怪盗紳士でなく強盗紳士というタイトル名に時代を感じさせられます。
ルパン、最後の恋』を読む前に、
積読中の本書を慌てて読んでみたのですが
大人になってから読むルパンもなかなか良いですね!
子供の頃読んだポプラ社のルパン物以来なんです、実は。
ポプラ社のルパンはカッコ良かった!
本作品のルパンは青臭くて泥臭いところもあって
とても人間的、そして根っからの犯罪人。
子供の頃の偶像がグラグラと・・・。


ルパンは冒険物というイメージがありましたが
意外や意外、ミステリ的にもなかなか面白いです。
トリック重視の色んな作品読んでますが
本短編集では色んな箇所で騙されました。
きっちりと大人向けのを読むべきかな?

A・クリスティ『死への旅』

A・クリスティ『死への旅』

死への旅 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


ノンシリーズ。冒険物。
東西冷戦で引き裂かれたヨーロッパの西側陣営で
次々と失踪する科学者。
ひょんなことからその事件に巻き込まれる主人公ヒラリー。
彼女がその事件に巻き込まれる件が巧いって思いました。
強引さもなく、自然に流れる設定は
さすが、クリスティですね!



しかし何でこのタイトルなんだろう。
もう少し軽やかなのでもいいのに。
ちょっと損をしてる気もします。
内容はタイトルほど重くなく、さくさく読めるスパイ物。
誰が敵で誰が味方か?
作者の巧みなストーリー展開にドキドキしながら読めました。
そしてラスト。犯人の捻り方もさすがっ!と膝を打ったところで
外国映画のようなラストの一場面は、読後感がとてもいいのです。

S・J・ローザン『ピアノ・ソナタ』

S・J・ローザン『ピアノ・ソナタ



ピアノ・ソナタ (創元推理文庫)



シリーズ第2弾。今回はビルの一人称語り。
ビルに対する印象がリディア視点より断然良いっ!
こんなにナイーヴで細やかな心配りのできるビルが
非常に危険な仕事をしてるという対比が面白い。
犯人は予想外の人物で、まさかっ!と驚きました。
警察関係と違って私立探偵だからこその決着の着け方、
だから読後感がとても良い。


そしてたまに織り込まれるピアノの描写も
魅力的な要素の一つ。
作曲家も作品名も有名処なのでイメージしやすい。


ビルのリディアへの切ない気持ちは
ビル視点で読むからこそ共感でき
そこがリディア視点と違った楽しみ方ができるんですよね。
この先この二人はどうなるのか?
事件解決と、この二人の関係に目が離せません。
次のリディア視点も楽しみ♪

ドロシー・L・セイヤーズ『五匹の赤い鰊』

ドロシー・L・セイヤーズ『五匹の赤い鰊』

五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)


ピーター卿シリーズ第6弾。
赤い鰊が偽の手掛かりというのはミステリ用語なんですが
それを知らなかった私はまだまだミステリ初心者。
いい勉強になりました。


内容はまさにタイトル通り!
5匹の赤い鰊(偽の手掛かり)が煙幕になって
真相が全然わかりません。
私以外にも「容疑者全員が共謀?」
と考えた人、いないかな。


ピーター卿も含めた警察関係者6人が
くるくると推理を展開するくだりは
早く真打ちとなるピーター卿の推理を披露してくれよなっ
て感じでちょっとイライラする場面も。
アリバイトリックで電車の時刻表がからんでくると
さらに頭が混乱して何が何やら・・。


トリック重視の作品は今までのシリーズにはない展開で
セイヤーズの新たな面が感じられました。
最後に事件を忠実に再現する場面は新鮮で
皆がノリノリで演じてるのが面白い。
時間的に絶対無理と思われた場面で
ああいうことがあったとは!
いや〜読後はすごくスッキリしました。