A・クリスティ『暗い抱擁』

A・クリスティ『暗い抱擁』


暗い抱擁 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


メアリ・ウェストマコット名義作品。ノンミステリ。
「背表紙のあらすじを絶対に先に読んではいけない」
という忠告をネットで読んでたのが助かりました。
これ、ほとんどネタバレですね。先にあらすじ読んでたら
面白みが半減しちゃいます。背表紙は後で読むべし。


基本的にはウェストマコット名義作品は苦手。
登場する女性に共感できないのが第一の要因だと思われますが
今回のイザベラはそういう点では不思議な存在。
イザベラの内面が一切ないため、彼女の思考や気持ちは
語り手のヒュー・ノリーズを通してしか理解できません。
何を思ってあのような行動をとって
何を思ってああいう生活を送っていたのか。
彼女視点で同じ内容を描いた作品が読みたいっ!
とつい思っちゃいました。


そして下層階級に生まれたゲイブリエル!
生れに雁字搦めになった彼の哀れさと
イザベラの不思議さが妙に印象に残った作品でした。