ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』

ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』


ナイン・テイラーズ (創元推理文庫)


ピーター卿シリーズ第9弾。長編。
鐘がこの作品の核なのに、鳴鐘術がよくわからない。
薀蓄が次々と続き、頭が混乱するんだけど
よくわからないなりに楽しめてしまう本作品。
個々の鐘に名前をつけ鐘の代名詞としてsheを使う英国の文化。
喜びも悲しみも鐘を鳴らしてそれを分かち合っており
素朴な田舎の生活が教会を中心に回っていることを
改めて感じました。
視覚も聴覚も、とにかく想像力をかき立てられる作品でした。


事件真相については、ピーター卿ですら振り回されて
悪戦苦闘しますが、最後の最後であまりの驚き!
直前の予測すら私には不可能で、全くの予想外。
いやー、凄いトリックでした。
ただその意外性より、登場人物の描写が細かくて面白い!
そして村人の方言が何とも味があっていいのです。
もちろん本格ミステリなんだけど
小説としての面白さも一級品でした。