京極夏彦『数えずの井戸』

京極夏彦『数えずの井戸』

数えずの井戸


江戸怪談シリーズ 第3弾。
番町皿屋敷という怪談、私が知っているのは
お菊さんという女中が大切な皿を割ってしまって
殿さまに手打ちにされ、それを怨んで化けて出るというもの。
それを京極さんがアレンジするとこんな大分量の作品になっちゃうですね。
いやー、凄かった。エネルギーを本に持って行かれてしまいました。
大体の筋立ては知っているからこそラストの予想はついているのに
771ページ、全く飽きずに読み切りました。
さすが、京極さん!毎度ながらに素晴らしいです。


しかしここまで夢中で読むながらも、どの登場人物にも共感できませんでした。
それぞれの気持ちがすれ違っていて、あまりに憐れなお話。
くどいくらいに執拗な語りは、正直しんどく苛立つこともありましたが
そのために肝心のフレーズがどんどん心に入ってきます。
「数えるから、足りなくなる」
という一文にはハッとしました。


又市の登場も、巷説ファンには嬉しいですね。