A・クリスティ『死との約束』

A・クリスティ『死との約束』

死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)



ポアロ物。長編。中近東シリーズ。
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
という冒頭の一文が印象的。これでグイっと作品に引き込まれました。
後にこの発言をした人物がボイントン家の次男レインモンドと判明し
実際に彼の母親が死亡。何となく状況もレイモンドに不利なような
気もしますが、「探偵小説では一番怪しい人物が実は犯人ではない」
というカーバリ大佐の言葉に笑っちゃいました。
そうそう、だから私もレイモンドは犯人外と踏んでるんだけど・・・。

殺されたボイントン婦人は、読んでる私達まで死を願ってしまうような
異常な性格の持ち主で、その家族に対する異常さがよく描かれてました。
ポアロは各容疑者との会話から、見事に犯人の心理に踏み込んで
真実を突き止めます。推理の過程を披露していく中での、
犯人を指す針がゆらゆらと各人を回っていくのはドキドキでした。
関係ありませんが、舞台が中近東というのは
どうしてもお洒落なポアロと似つかわしく感じられますが。